NO2 原子力災害時の「想定外」と「緊急対応」跡部紘三

NO2 原子力災害時の「想定外」と「緊急対応」跡部紘三

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過酷な耐久競技のラリーで自動車の安全技術は様々に試され、磨き上げられてきました。車両自体の問題で大きな事故もあまり聞きません。理論のみではなく、徹底的に実験され、試験を通過した技術のみが社会に受容されていきます。この自動車の安全技術の発展過程から、また実験を中心にした長年の仕事から、私は以前より原子力の巨大システムでも単なる理論や計算を中心にした安全性の主張には大きな疑問をもってきました。地震や津波も含めて、この災害を乗り越えられるものは『実物サイズ』での過酷試験が必ず必要と考えています。もしこれが、技術的・経済的にも、社会的にも不可能であれば事業として推進すべきものとは考えません。原子力災害で周辺住民の方々へ大変な運命を押付けることになりかねませんし、国土や海を荒廃させ危険地域にしてしまうからです。日本のように古来、地震、津波が度々起きる地震列島で原子力事業を推進した政府や会社の『想定外』、『予見不可能』の主張は空しいものです。物事を進めたい人間の深層心理として都合の悪い結果は想定したくない気持ちが責任をもつ側に強く働くのかもしれません。
  もう一つ、福島原発事故時の印象的な事態は各国政府の迅速な対応です。アメリカは原子力災害に極めて敏感で、この時すぐに原子力空母や在日アメリカ軍を被災地の救援に向かわせました。同時に在日アメリカ人の安全を担保するため自主避難区域を原発より80km外と設定し、厚木や横須賀から脱出・帰国させ、福島上空を無人偵察機で独自の放射能観測を続けました。フランスや他国も在日国民を集めて飛行機で緊急に帰国させました。核戦争も含めてアメリカは原子力災害に即応態勢を有し、核の先制攻撃を排除せず、また核の攻撃が察知されたら、即時の報復核攻撃を行う体制が常に維持されています。
オバマ前大統領も広島に『核のボタン』を持参したように緊急事態への対応策・手順は具体的・現実的です。日本は原爆の被災国として、また、原発災害を経験してきた国として『想定外』事後の後始末、後追い思想から脱し、想像力をもって核兵器廃絶のマニュアル・手順を事前に世界へ発信すべきと思います。

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