NO3 放射線による材料劣化と教育
NO3 放射線による材料劣化と教育
6月6日、茨城県大洗町の日本原子力研究開発機構大洗研究開発センターで作業員5人がウランとプルトニウムが入った保管容器を点検していたところ、放射性物質が漏れて被爆したとの報道がありました。この事故の詳細はまだ明らかでは有りませんが、今後のためにこの件を十分調査して、教訓にしてほしいと思います。なぜなら、原子力発電所を稼働させた国々共通の課題として燃焼前のウランやプルトニウムそして使用済み核燃料物質を気の遠くなるほど長く安全に保管する重要な責任があるからです。10万年先を見通すこれらの保管・廃棄場所はすぐには決まらなくとも、少なくとも住民の安全性を確保しながら厳格に管理・継続していける技術や体制について十分な実証研究が要請されています。わずかな期間でも注意を怠ると、放射性物質の飛散から最悪なアルファ線等による人体の内部被爆事故を引き起こすからです。
先日の当事業所でのウランとプルトニウムは1991年にポリ容器に入れ、ビニール袋に包んで保管容器に26年間保管していたとの事であった。私が驚いたのは「ポリ容器に入れ、ビニール袋に包んでいた」が容器開封時にビニール袋が破れ、内部の粉状の放射性物資が飛散したことです。私は学生時代にポロニウム線源を実験に使用したことがあり、線源の入ったアクリル製の容器の蓋を開けると、蓋の内側が餅を焼いたように膨れ上がっていた事がありました。生体や有機物にウランやプルトニウム等が密着することがあると、アルファ線等でそれらに大きな損傷を残します。わずかの時間でもポリ容器やビニール袋に密着させるとその材料が劣化したり、ガスへと分解する可能性があります。「ビニール袋が破れることを想定していなかった」と事業所が記者会見しましたが、とりあえず一時的に保管するにしろ放射線による材料劣化の問題は常時留意する必要があります。
日本だけでなく、原子力をエネルギー源として利用した国々はこれ等で用いたウラン、プルトニウム、使用済み核燃料等を何万年単位の時間で安全に保管する義務があります。
わずか30年足らずの保管でこの様な事故発生は何だろうと思います。私が気になることは学生にアンケート調査をすると残念ですが、「難しい課題は行政や専門家へ任せる」という回答が多かったことです。これでは安全性や超長期間の防護体制は育っていかないのではと思うのです。私は学校教育の段階で児童・生徒が生活の基礎により関心を持ち、安全のための知識を得て、自ら意見を持ち判断できる力の育成に期待しています。まず、皆が関心をもつことです(跡部紘三)。