NO5 X線とγ線の違い(2)

NO5 X線とγ線の違い(2)

前回はX線の話しでしたが、今回はγ線の話しです。
現在、存在が確認されている元素の数は118(人工合成元素を含む)ありますが、これらのうち外から何ら手を加えずとも自然に自ら放射線を出している元素として最初に知られたのは天然に存在するウランでした。1896年のことですからX線発見の翌年です。
この大発見がきっかけとなって新たな天然存在の放射性元素が次々見つかり、放射線についてはラザフォード(英) が3種類あることを明らかにしました。まだ正体は不明でしたので3種類を区別するために、ギリシャ文字を借りて便宜的にα(アルファ)線、β(ベータ)線、γ(ガンマ)線と名付けました(1902年)。今ではこれらの自然放射線は次のように判明しています;
α線:ヘリウムの原子核(陽子2個+中性子2個)。α粒子ともいう。電離作用が強く、透過力は小さい。
β線:中性子が陽子と電子に変化するときに出る電子。電離作用、透過力はα線とγ線の中間。
γ線:波長の短い電磁波。電離作用は小さく、透過力が大きい。
放射線のすがたがここまではっきりすると、ある元素が自ら放射線を出すのは、もとの
元素が別の元素へ変化(崩壊、壊変)しようとして放射線を出している現象であると理解できます。なぜなら、α線を出して元素が変わる場合をα崩壊、β線を出す場合をβ崩壊といいますが、どちらも陽子数の変化を伴なっているからです。原子で考えると、原子の中心にある原子核が元の原子核から新たな原子核に変化(崩壊)する現象になっているのです。つまり、核の崩壊=元素の崩壊、なわけです。
ここで、α・β崩壊が起きる直前の原子核(元の核)はその核の最も安定なエネルギー状態にあるのですが、崩壊直後の新しい原子核は、多くの場合、最も安定な状態よりもエネルギー的に高い状態で生成されます。この高いエネルギー状態は核にとっては非常に不安定な状態で居心地が悪いため、もっと安定な状態(エネルギーの低い状態)に移ろうとします。このとき、高いエネルギー状態ともっと安定なエネルギー状態との差に相当するエネルギーをγ線として放出します。それ故、γ線はα・β崩壊に伴なって核から放射される電磁波なのです。また、このγ線放射で新しい元素が生じることはありませんが、同じ核のなかでγ線を放出して新しいエネルギー状態へ変化していますから、これも放射性崩壊の一種とみなしてγ崩壊と呼ばれています。
前回と今回の話しから表題の結論は、“X線は電子が放出する電磁波でγ線は核が放出する電磁波ですが、同じ電磁波であっても発生の起源が全く異なっているというこの点にX線とγ線との本質的な違いがある”ということになります。

松山奉史

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