原発と原爆の同異(1) ― どちらも原理は同じ ―
原発と原爆の同異(1) ― どちらも原理は同じ ―
松山奉史
核分裂とはウラン(U)やプルトニウム(Pu)のような重い原子核が、質量があまり違わない二つ以上の原子核に分裂する現象で、核反応の一種です。核分裂を起こす性質をもつ原子核を核分裂性核種といい、U—235、Pu—239などのことです。これらの原子核には外から手を加えずとも自発的に分裂する確率もありますが、外から中性子、陽子、α粒子、γ線などで刺激(照射)すると分裂が起こりやすくなります。また、分裂にともなって2~3個の中性子が新たに放出される性質があるので、この中性子を外部刺激として再利用すれば次の新たな核分裂を誘起することができます。この過程を繰り返し持続させた状態を連鎖反応と呼びます。
ところで、核分裂を発見したのはドイツのオットー・ハーンで1938年のことです。ウランに中性子をぶつける実験で発見し、アインシュタインの有名な公式を用いると、一つの核分裂で約200メガ電子ボルトのエネルギーを放出することが明らかになりました。このエネルギーは莫大で、通常の化学反応(燃焼)で放出されるエネルギーの約100万倍に相当します(1グラム当り)。誇張かもしれませんが、この核エネルギーを利用すれば世界のエネルギー問題は永久に心配しないで済むだろうと思われるほどの画期的な大きさなのです。
ところが、このエネルギーを実用化するための本格的研究の開始は原爆開発という軍事を目的としたものでした。開発に成功した原爆は1945年に広島と長崎に投下され、人類に大きな災いをもたらしたことはご存知の通りです。次に研究されたのは潜水艦用の動力源としてで、軽水型原子炉が開発されました(1954年)、そして、軍事用に開発したこの原子力潜水艦用原子炉を商業用発電炉へと転移したのが、現在の原発の出発点となりました。
上で述べたように、原発と原爆は核エネルギーを利用するという点で原理的に全く同じであり、実用化の原動力は軍事研究にあったことも共通しています。とはいえ、電力生産のための原発と兵器としての原爆とでは何から何まで全く同じであるというわけではありません。次回以降もしばらくの間、科学的な視点から両者の同異について述べる予定です。