2020年 新年のご挨拶
2017年7月7日に採択された核兵器禁止条約は、署名国が80ヵ国、批准国は34ヵ国となりました(2019年12月10日現在)。批准国の増加の推移を見てみると、17年末で3ヵ国、18年末が19ヵ国、そして19年が34ヵ国と、着実に増えてきており、同様のペースで批准国の増加が進めば、今年中にも条約発効の条件である50ヵ国(残り16ヵ国)に達する可能性も出てきています。
今年は被曝75年の節目の年であり、5年に一度のIPT再検討会議の年であり、被爆地以外で初めて原水爆禁止世界大会がニューヨークで開催される年でもあります。非核・平和の国際的世論が大きく盛り上がる年となる事でしょう。
昨年11月。ローマ教皇(フランシスコ教皇)が訪日し、長崎、広島等を訪れました。教皇は長崎の爆心地公園に立ち「この場所は私たち人間がどれだけひどい苦痛と悲しみをもたらすかを深く認識させる」と核兵器の非人道性をうったえました。また教皇は「戦争のために原子力を使うことは犯罪以外の何ものでもない」と核兵器の違法性を訴え、「核戦争の脅威で威嚇することに頼りながら、どうして平和を提案できるか」と、核抑止論を強く批判をし、また核の傘の下にいながら平和を語る「偽善」についても強い言葉で非難しました。日本に対しては「広島と長崎に投下された原爆によってもたらされた破壊が二度と繰り返されないよう阻止するために必要なあらゆる仲介を推し進めてください」と、唯一の戦争被爆国として本来国際社会で果たすべき役割を指摘しました。さらに日本からローマに戻る特別機の中では原発について「完全に安全が保証されるまでは利用すべきではない」と発言しました。
フランシスコ教皇が日本で発したこれらの言葉は、カソリック信者のみならず、信仰の有無の区別なく共感の輪が広がりました。教皇の言葉は非核・平和の世界を求める人々共通の言葉であったからでしょう(ちなみに菅官房長官は核抑止論を肯定し、核兵器禁止条約に反対する立場から教皇の発言に反発しましたが、極めて見苦しい振る舞いでした)。
平和を願う人々の共通の思いを世界有数の宗教指導者が、戦争被爆地、そして史上最悪の原発事故が発生した日本で明言した意義は誠に大きいのではないかと考えます。ローマ教皇が長崎・広島そして東京で発したメッセージの内容をかみしめて、非核平和にとって重要な年である2020年を過ごしたいと考えます。
本年もよろしくお願いします。