原発と原爆の同異(2) どちらもイニシエーターが必要

原発と原爆の同異(2)どちらもイニシエーターが必要

松山奉史

原発と原爆は核分裂反応で放出される核エネルギーを利用しています(前回参照)。反応の特徴は中性子(以下nと記す)を仲立ちとする連鎖反応ですが、その進行具合は原発と原発では異なっています。その差異を解説している図(U-235が核分裂で2個の核分裂片に分かれ、その際2個のnが放出されることを仮定している)を目にすることがありますが、その図を反応に与かるnの数に注目して追いかけてみると、
原発の場合:n(i)→n(1G)→n(2G)→n(3G)→・・・   (Ⅰ)
原爆の場合:n(i)→2n(1G)→4n(2G)→8n(3G)→・・・(Ⅱ)
但し,
n(i):最初にU-235に吸収されて分裂を誘起するn(iは“初めの”の意),
1G、2G、・・・:第一世代、第二世代・・・の意,
のようになっています。式Ⅰは各世代で生まれる2個のnのうち常に1個のみが次の反応に与かる(実はそうなるように反応は制御棒等で制御されている)ことを述べており、原発が定常運転の状態にある臨界状態の様子を示しています。式Ⅱは各世代で生ずるnの全てが如何なる制御も受けずに反応に寄与し、核分裂がネズミ算式に途方もない数へと増大していく様子を示しています。つまり、原発と原爆では連鎖反応の進行にこのような差異があるというわけです。
ところで、式Ⅰ、Ⅱの反応が起きるためには最初にU-235に吸収されるn(i)が何処から来るのか知りたくなりますが、上述した反応解説図にはその由来(出所)の明確な指摘はありません。そこで、n(i)として自然界から飛来するnとかU-235やU-238の自発分裂で放出されるnを利用してもよいように思われるのですが、こうしたnの候補は数も少なく気まぐれにしか飛んで来ませんから、思い通りに利用することは実際のところ非常に困難なのです。原発や原爆を使用するに当っては、必要なときには任意にⅠ、Ⅱの反応を開始させ、両者の機能を自由自在に確実に発揮させたいのですから、n(i)は(通常の燃焼における火種のように)何時でも供給できるように何らかの形で別途用意されていることが必要になります。それがイニシエーターあるいは中性子源と呼ばれるもの(例えば、ローソクに点火するライターに相当)で、原発にも原爆にも必須の装置になっています。
教科書によれば、酸化アメリシウム(Am)-241とベリリウム(Be)金属の粉末の混合物を圧縮してペレット化したAm-Be中性子源が原発用イニシエーターの一つになっています。Am-241のα崩壊で放出されるα線をBe金属に当ててnを発生させ、これをn(i)とするわけです。この装置は典型的には1秒間に約200万個のnを発生するそうですから、原発ではU-235が含まれている燃料体のあちこちで反応開始点がつくられⅠの反応が進行していることになります。原爆用イニシエーターの構造については詳しい情報を持ち合わせていませんが、α線を使ってnを発生させこれをn(i)とする方式には変わりがないようです。

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